【KEY BOOK】「マイルス・デイヴィスの真実」(小川隆夫著/平凡社、3990円)
「スイングジャーナル」連載の「マイルス・デイヴィスがすべてだった」を、ぼくの編集担当者が本にした。ニューヨーク大学大学院にいた頃からジャズミュージシャンたちと交わり、MDとも何度も語らってきた著者には、MDに対する万感こもる敬愛が染みわたっている。練習に練習を重ね、実は譜面通り吹いているMDが、しかしつねに独自のスタイルを発揮できたのはなぜなのか。本書はこの謎を解くために綴られたと言っていいだろう。ゆっくり読みたい。
【KEY BOOK】「M/D(上下)」(菊地成孔・大谷能生著/河出文庫、1470円)
これぞお待ちかねのMD論だ。鳥の目と虫の目が、時代社会感覚とマニアックな分析感覚が、グルーヴな用語と日本語の用語が、これほど多点多岐多様にフュージョンしながら高速に語られた本はない。おそらく菊地の「見立て」の能力が広範で俊敏で、きわめて知的であるからだ。だから本書はMD本でありながら、菊地本だ。さらに詳しくは『憂鬱と官能を教えた学校』を手に取られたい。画期的な音楽技能書だ。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)