【BOOKWARE】
右の写真を見て、これが44年前の雑誌の目次の一部だとわかる人はいないだろう。それほど斬新だ。しかし、そうなのだ。「暮しの手帖」1969年冬号なのだ。中身はいまでも説得力をもつ。たとえば見出しになっている「天ぷら油とサラダ油」については、編集部が実験検証したところ、「作ってみても食べてみても二つの油に差はない」「まんまとメーカーの手にのっていました」というふうにレポートされている。
花森安治が「暮しの手帖」を創刊したのは1948年だった。すでに大橋鎮子(しずこ)とともに衣裳研究所で『スタイルブック』を創刊していたが、このコンビで女たちの「暮らしの知恵」の役立つ雑誌をつくることにした。そんな雑誌はなかったから、なにもかもが手作りになった。
編集方針は、世の中に流通している常識を鵜呑みにしない、説明はわかりやすくする、商品の特性は必ず検証する、妥協はしない、大事なことは繰り返す、というもの。とくに商品テストはスタッフ全員で立ち向かった。そのため企業広告をいっさい受け付けなかった。当然、編集制作にお金はかけられない。みんなが知恵を出し、みんなが手を出した。見出し文字や表紙の絵は、死ぬまで花森自身が描いた。