山鹿傘の特徴は、持ち手に焼きを入れることにより装飾を施し、それが虎のようでもあり、なかなか粋である。京都の華奢(きゃしゃ)で繊細な傘に比べると、力強さを兼ね備えており、日常使いにも耐えうるものだ。
和傘づくりの工程では、ベースを吉田さんがつくり、切り絵による絵付けを奥さんが担っている。興味深いのは、伝統的な和傘づくりを継承しながら、実用面や現代的な面白さを考慮している点だ。色も黒や白や茶のみならず、紫や赤や緑など、女性にも受け入れられる色を展開している。
骨を支える傘の先端の部分は「頭ロクロ」と呼ばれ、傘のなかでも一番肝心な部分だ。「頭ロクロ」づくりには別に専門の職人がいるのだが、現在日本には1人しかいない。国内では山鹿以外に京都や岐阜などの大きな和傘の産地があり、この「頭ロクロ」を手に入れるために吉田さんは日々奔走しているのが現状である。
日本のものづくりのルーツは、自然が豊かで水がきれいな場所にある。それらの場所はたいてい都市部からは遠い。そこに住んでいる人たちは、謙遜も含めて「ここは何もないでしょう。ゆっくりしていって下さいね」と言う。しかしながら僕から見れば、東京よりも情報やものの数は少ないけれども、本物の数は明らかに多い。