いま一番自分が食べたいものを、自分の内側をよくよくのぞきながら、ひょいとこしらえる。万人受けしない料理って、じつは一番贅沢なごはんなのかもしれない。(ブックディレクター 幅允孝/SANKEI EXPRESS)
■はば・よしたか BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。人と本がもうすこしうまく出会えるよう、さまざまな場所で本の提案をしている。
(1)それぞれの料理に、吉田戦車独自の写真とイラストが付いた一冊。やらなければならないことに背を向けて作られる料理には、孤独や哀愁の味がにじみ出ている。追いつめられた中で生まれるクリエイティビティーは、あらぬ方向に発揮されるのかも知れない。イースト・プレス、1460円。
(2)四季をめで、その旬の素材を活かした料理が並ぶ『料理歳時記』。著者の辰巳浜子は、料理研究家の辰巳芳子の母にして、日本の家庭料理の祖とも呼べる人物だ。巷に溢れるレシピの洪水にのまれそうになった時、僕たちの帰る場所として確かに存在してくれる一冊。中央公論新社、760円。
(3)微妙な味や、ちょっと失敗とも言えるおかゆも登場してくる本書。しかし、「こうしたらうまいのでは」と試行錯誤しおかゆをつくり続けるツブには、どこか羨ましさも感じる。ちなみに「ビールおかゆ」については、吉田戦車いわく「あ、試さなくていいです」とのこと。小学館、780円。