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音のない世界から「ありのまま」を撮る 「宝箱-齋藤陽道 写真展」 椹木野衣 (3/5ページ)

2013.12.25 17:30

「宝箱ー齋藤陽道_写真展」の会場。作品の一枚、一枚が、齋藤の気持ちをみるものに伝えようと迫る=東京都渋谷区のワタリウム美術館(齋藤陽道さん撮影、提供写真)

「宝箱ー齋藤陽道_写真展」の会場。作品の一枚、一枚が、齋藤の気持ちをみるものに伝えようと迫る=東京都渋谷区のワタリウム美術館(齋藤陽道さん撮影、提供写真)【拡大】

  • 「宝箱-齋藤陽道_写真展」__「無音楽団」シリーズから(齋藤陽道さん撮影、提供写真)
  • 「宝箱_齋藤陽道_写真展」__「感動」シリーズから(齋藤陽道さん撮影、提供写真)
  • 「宝箱_齋藤陽道_写真展」__「せかいさがし」シリーズから(齋藤陽道さん撮影、提供写真)
  • 「宝箱_齋藤陽道_写真展」__「せかいさがし」シリーズから(齋藤陽道さん撮影、提供写真)
  • 「宝箱_齋藤陽道_写真展」__「せかいさがし」シリーズから(齋藤陽道さん撮影、提供写真)
  • 写真家、齋藤陽道(さいとう・はるみち)さん(ワタリウム美術館提供)

 ミュージシャンや子供たち、楽器や祭りの様子を、その場で響いているであろう音を知ることなく撮るのだ。齋藤のことばを借りれば「永遠の片思い」ということになる。ことほどさように、彼は自分が世界と隔てられていることを、強く意識しながら写真を撮っている。カメラを構えれば健常者も障害者もない、とは考えていないはずだ。むしろ、両者の間に横たわる、永遠に直接には交わらない隔たりこそを、齋藤は精妙に写し撮ろうとする。

 埋まらない距離感

 どの写真にも感じられる、見る者を優しく包み込むような多幸感にもかかわらず、齋藤の写真が、どこか寂しげに見えるのは、そのためだろう。けれども、永遠に埋まらないこの距離感は、実はどんな写真家にも共通の問題のはずだ。齋藤は、写真家に特有なこの宿命について、みずからの障害ゆえ、誰よりも明瞭な意識を持っている。

椹木野衣略歴

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