「沖縄に対する思いが、かつてのどの内閣にも増して強いと感じた」
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設で、仲井真(なかいま)知事は辺野古の埋め立てを承認した理由として、安倍晋三内閣の「沖縄への思い」を挙げた。
その橋渡し役となったのが、菅義偉(すが・よしひで)官房長官だ。それを象徴する光景がある。
「要請書を持って参上しました」
12月17日に開かれた沖縄県の基地負担軽減策と振興策を話し合う沖縄政策協議会。他の閣僚が一心不乱にメモをとる中、首相と菅氏だけは持参した要請書を読み上げる仲井真氏をじっと見つめていた。
《(1)普天間飛行場の5年以内の運用停止(2)牧港(まきみなと)補給地区(浦添市)の7年以内の全面返還(3)日米地位協定の改定(4)普天間飛行場の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの半数の県外移転》
要請書に込めた仲井真氏の思いを県幹部が代弁する。「基地負担軽減の実現に本気度をみせてくれ」
要請書の4項目は政府内で唐突と受け止められた。
だが実は菅氏は11月上旬、まったく同じ要請書を入手していた。「承認にあたり、知事が迫った踏み絵だ」。菅氏は直感した。