≪火祭り育んだ人々の濃厚な関わり≫
日が傾くにつれて緊張感が漂いはじめる。僕が惹(ひ)きつけられたのは、男衆が正装を身につける姿だった。火祭には、短い襦袢(じゅばん)で肩と腕を覆い、白い下がりを装着した独特の正装姿で参加する。この日のために鍛え上げた若者たちの体に、先輩たちがふんどしを締め、下がりをつける。楽しそうに会話しながら、同時に祭りに向かう姿勢や気合いを伝えているようにも見える。誰もがこの火祭りの担い手であり、何かを伝え、そして手伝おうとしている姿が心地よく感じられた。そう、手伝うことは、伝えることなのだ。
午後6時、日暮れとともに「神事ぶれ」といって、火祭の始まりを告げる松明が練り歩く。各松明に火が入り、「サイレイヤ、サイリョウ」と口にしながら、「遣(つか)いの松明」の往来と「諸礼」を繰り返し、各仲間が松明の数を増やしていく。そして由岐神社の山門を目指して集結し、「注連縄(しめなわ)伐り」の儀式が行われる。