意中の人に断られ…
米倉氏は昨夏から年末にかけ川村会長に再三、次期会長就任を働きかけた。だが川村氏は74歳という年齢などから就任を固辞した。
関係者によると、今年に入って米倉氏が榊原氏に就任を打診したという。現役の副会長には、トヨタ自動車や三菱重工、新日鉄住金、東芝など有力製造業の現役トップがそろっている中で、住友化学の米倉氏は同じ化学品業界出身で関係の深い榊原氏に後を託した形だ。
東レは三井グループの中核企業で、合繊業界では首位。榊原氏は社長在任中に炭素繊維で自動車部品向けの開発などを進めたほか、米ボーイングの旅客機「B787」向けの長期供給契約を2006年に結んだ。6年連続で増益を達成するなど、大きく成長を遂げた。
榊原氏をよく知る関係者は「何事も数字で判断し、納得しないと首を縦に振らない理論家」という。東レ社内では榊原氏を「熱い人物」と評する声が多い。米倉氏が榊原氏を後任に指名したのは、経営手腕とモノづくりに対する情熱が決め手になったとみられる。