ひとつの作品を手にする瞬間
おそらく私の中にもこの「大人借り」のような振る舞いに些(いささ)かの違和感を抱いているためなのかもしれない。もちろん職業上、資料となる本をどっさり購入したり、図書館から山と借りてきたり、周囲の目などもろともせずにかき集めることもあるのだが、日常生活に戻って改めて考えてみると、現時点で本当に望んでいるものが何なのか明確にできずに、ただいたずらに自分に猶予を与え、寧(むし)ろ時間を浪費しているだけなのかもしれないとも思えてくる。お金さえ払えばクリックひとつで何でも手に入るような時代になって、それでも私は本屋へ行くことや、映画を借りに出掛けることはやめまいと、こうして肉体を使ってやってきている。それにしては思考が足りないのかもわからない。
現実に足を運ぶということで、予測できない空間が生まれ、思いもよらない作品と出合える可能性については私も理解しているし、それを楽しみにしている。しかしそうした出合いを慎重に味わいもせずにいたずらにカートに放り込んでしまってはネットショッピングと大して変わらない。比較対象が大量にある中で自分が手にしたものを吟味し、果たしてこれが新年さっそくに観たい作品なのかどうかをしっかりと見極める。どさどさと借りて後になってだらだら自宅で選び直すのではなく、ある程度の計画の元に的確な判断を下す。そこで敢えて余白としてプラスの1本というのであれば、いやまあ、それくらいであれば許容しましょう。