肖像には、創作する人物と描き込まれた人物の視線が交錯している。そこに鑑賞者の視線が加わり、いくつもの時代の記憶が折り重なる。鑑賞者は創作者と視点を共有しながら描かれた人物の視線や目元からにじみ出る表情と対話を交わし、いつしか鑑賞者の心を映す鏡となっていく。
「どんなに鮮明な記憶も、あいまいさを避けることはできません。不確かさを含むからこそイメージはさまざまに変化し、拡散していきます。素材となった肖像画はドイツ、イタリア、英国に北欧、もちろんフランスの作品とヨーロッパに広がっていますし、現代人の写真もオリエンタルな顔立ちなども配置して、個々の記憶とともに、人間という集団全体の記憶を喚起できるようにと考えました。作品に示したのは時代や文化のアレゴリー、象徴であり、人間性への賛辞です。生きることに問いを投げかけ、希望へとつながるものでありたいのです」(谷口康雄/SANKEI EXPRESS)