≪米中「発火点」 新興国から資金逃避≫
新興国からの資金逃避が止まらない。発火点は「米国の過剰な緩和マネー」と「中国の不良債権問題」だ。ブラジルやトルコなどでは、通貨、債券、株式が同時に売り込まれるトリプル安の「新興国売り」が加速しており、資金は比較的安全とされる米ドルや円に還流している。こうしたリスク・マネーの逆流が、世界経済の成長に足かせとなる可能性も出てきた。
米国務省が1月半ば、ニューヨーク駐在の海外特派員を招待してモルガン・スタンレーやバンク・オブ・アメリカなどの地元金融機関を訪問するツアーを組んだ。ウォール街の世界経済に対する見方を紹介する――という趣旨だったが、エコノミストらは共通して「新興国経済の先行き警戒感」(米投資銀行のキーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズ)を強調した。
懸念の中核は、通称「フラジャイル・ファイブ(脆弱(ぜいじゃく)なる5カ国)」といわれるブラジル、インド、インドネシア、トルコ、南アフリカの5カ国。いずれも国家の現金収支ともいえる経常収支が赤字で、対外短期債務に対する外貨準備高の水準が低い新興国群だ。インフレ圧力から債券が売られて金利が上昇。これにより対外債務の返済が危ぶまれて通貨が売り込まれた。先週、アルゼンチン・ペソが売られたのも同じ理由だ。