「五輪で最高の滑りだった」という決勝3回目を滑り終え、目頭を押える上村(うえむら)愛子。まだ、結果が出る前だったが、やり切ったという満足感、これが最後という思いが、自然と涙を流させた=2014年2月8日、ロシア・ソチ(古厩正樹撮影)【拡大】
だが、当の上村は、6人の中で最初に3回目を滑り終えた直後は涙を見せたが、結果が決まってからのインタビューでは、「今は達成感がマックス(最大)。(バンクーバーと同じ4位でも)前回よりすがすがしい。メダルを取れていればそれでうれしかったし、7位でも多分同じ気持ちだった。攻め切れる滑りができるところまで戻ってこられた。もうちょっと頑張れば越えられたのではないか、という壁が今回はなかった」とすがすがしかった。
惜しかった。6人中5人が競技を終えた段階で上村は3位。最後に登場したバンクーバー金メダリストのハナ・カーニー(米国)がターンでミスを連発し、上村はフィニッシュエリアの暫定3位の席から、「これはもしかしたら(表彰台に)乗ったかなと思った」。しかし、結果は2.77点差の4位。恋い焦がれたメダルが、またも寸前で手からすり抜けていった。
母「本当に幸せ」
「ありがとう」。上村は試合後、フェンス越しに母、圭子さん(62)を見つけ、手を振った。「よかったね。頑張ったね」と圭子さん。いつもの“愛子スマイル”ではなく、安心したような娘の表情になった。
5回目の五輪。圭子さんはいつも娘のそばにいた。5位に終わった2006年のトリノ大会では、涙があふれた娘に手作りの特大「金メダル」をかけ、ねぎらった。