しかし、歴史的な民族の成り立ちに関わる微妙な問題をはらむだけに、誰かがそのバランスを崩せば「民族感情」が一気に噴出してしまう。それが今回、ロシアが果たした役割であり、その帰結がウクライナ南部クリミア自治共和国の一方的な併合だった。
「国際法違反だ」などと世界から寄せられる非難の声にも、ロシアのプーチン大統領は耳を貸さない。その理由を考えると、ある事例に思い当たる。
ロシアでは、スーパーなどで知人を見つけて会計を持つ列に割り込む人が後を絶たない。事あるごとに注意したが、素直に謝る人はまずいない。代わりに戻ってくるのは「ロシアのルールは世界のルールだ」「あなたがロシアに従え」といった大声だ。
一言で言えば、上から下まで米ソの二大超大国時代の「大国意識」にどっぷり漬かったままなのだ。独立した他国の領土を土足で踏みにじった罪は、いずれロシア自身へと跳ね返ることだろう。想像もつかないほどの大きな代償となって。(佐藤貴生/SANKEI EXPRESS)