戯曲賞に名を冠し、日本現代演劇の父と呼ばれる岸田の戯曲はきっと高尚なのではないか-。素人にはそんな“食わず嫌い”なイメージすらある。が、実は岸田ワールドは、滑稽洒脱でアバンギャルド。そんな面白さを「小難しい芝居でなく、ポップなパッケージに仕上げたい」と望むKERAの助けとなるのが、豆千代が常識にとらわれずミックスコーディネートしたモダンでかわいい衣装の数々だ。
和洋織り交ぜ
例えば女性は、着物の中にブラウスを合わせ、飾り襟はレース、帯飾りにはパールのリボンブローチ、足元はソックスにパンプス。着物の中はワイシャツで、帯にサスペンダーをつけた男性の衣装も粋だ。着物や帯、半襟の布地には、欧州のデッドストック生地なども使ったという。時代どころか和洋も問わない。KERAはそんな豆千代の衣装を「ポップというかキッチュに近い感じ」と評する。
豆千代は現在、オランダ・アムステルダム在住。「和と洋、先進と古典、憧れと劣等感…相反する感情を織り交ぜながら、和や日本文化に対する誇りを持ったまま西洋文化を自由に取り入れ楽しんでいたのではないでしょうか」と大正時代の人々に思いをはせる豆千代もまた、同様の進取のスピリットやミックス感覚を持ち合わせているのではないだろうか。(津川綾子/SANKEI EXPRESS)