【国際政治経済学入門】
3月下旬、米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席が訪問先のオランダ・ハーグで会談し、「新型の大国関係」の強化で一致したという報道が流れた。もっともらしいが、どうとも受け取れる外交特有のレトリックかと思っていたら、その後の展開で中身がわかってきた。新型関係の核心はどうやら、「米中サイバー戦争の休戦」交渉である。
国家間のサイバー戦争というのは、軍のサイバー攻撃部隊が相手国のインターネットの主要ポイントに侵入し、大量のバグ情報などを流して機能不全にする。軍などの政府機関、さらには金融市場など民間のサイトも攻撃される。
やられた方は、やはり軍のサイバー部隊がやり返す。通常の戦争と違って、宣戦布告はないし、正体を明かさない沈黙の戦争でもある。そんな戦いを激化させたところで、お互いの利益になるはずもないから、いい加減にしようじゃないか、と米国側が中国側に申し入れたのだ。
「双方の利益にかなう」
訪中したヘーゲル米国防長官は4月8日、中国の常万全国防相と会談した際、「誤解が判断ミスに至る危険を減らすため、米中双方がサイバー能力を互いに開示すべきだ」と申し入れた。