3月の下旬、その静かな住宅街を歩いていると、民家の屏に「かまくらはちみつ」の小さな看板。どう見ても個人のお宅の庭先なのに「松浦養蜂園」と名前も入っている。「何だろう」と思って、飛び込みでご主人の松浦一(はじめ)さん(74)にお話をうかがった。こんな町中で養蜂園を?
「退職後のことも考え、4年ほど前から本やインターネットで勉強しました。素人ですよ」
2年前に建築設計事務所の役員を退き、庭先で本格的に養蜂を始めた。ミツバチは法律上、家畜扱いなので神奈川県の畜産課や地元の保健所にも届けを出している。「素人」とはいえ、本格的だ。日を改め、4月に入ってもう一度、撮影のためにうかがった。
「何年か前に、銀座のビルの屋上でミツバチを飼っている銀座ハチミツのニュースがあったでしょ。あれが興味を持つきっかけ」
庭先には5つの巣箱。ひと箱で2万~4万匹のミツバチを飼う。昨年(2013年)は100リットルのハチミツが取れた。2リットルの大型ペットボトルで50本分の計算だ。自宅で使うだけでなく、近所の人におすそ分けしたり、お歳暮やお中元に「僕が作ったんですよ」と贈ったりもする。