ホルムズ教授も、中国艦隊が力を付けるには守勢的な「要塞艦隊的思考」を払拭し、攻勢的な牽制艦隊へと《海軍文化を根本的に改める》ことが大前提と、弱点を指摘している。
もっとも、以上はあくまで原則。マハンは、要塞/牽制2種類の艦隊の性格・役割をどちらかに一本化させるわけではないと強調。要塞と艦隊の実力の上下=力関係により、いずれが主役かを決める性格上の綱引き=《調整》を行い、その結果を艦隊の性格・役割の濃淡に反映させるのだ、と論ずる。
非対称戦力で時間稼ぎ
中国艦隊の性格・役割の濃淡を決める《調整》要素として、現代海軍戦略に突如浮上したのがASBMであった-小欄はそう考える。ASBMなる“要塞砲”の援護を受ければ「牽制艦隊に近い要塞艦隊」=「外洋海軍に近い沿岸海軍」のままでも相当な《抑止・制限》効果を生む。
日露戦争当時、露旅順要塞を攻撃した日本側攻城砲(要塞砲を転用)の最大射程はわずか7.65キロだったが、ASBMの射程は1000キロ単位のオーダー。中国勢力圏は広大で、発射源の位置(陸上とは限らない)により日本列島はじめ、中国の対米軍絶対防衛線・第1列島線(九州~沖縄~台湾~フィリピン~ボルネオ)と将来的防衛線・第2列島線(伊豆/小笠原諸島~グアム・サイパン~パプアニューギニア)付近に撃ち込める。