しかし実際の閣僚級協議では日米の溝は埋まらなかった。フロマン氏も甘利氏も国内からの圧力にさらされており、安易に相手に歩み寄れば、議会での批准が不可能になるリスクがあるからだ。
米自動車業界ではTPPへの慎重姿勢が際立つ。米国は日本からの輸入車に乗用車で5%、トラックで25%の関税をかけており、TPPで関税引き下げや撤廃が決まれば、業績や雇用への影響は避けられない。米自動車大手でつくる自動車政策評議会(AAPC)は「日本が為替操作を行って、米国への輸出を有利に進めている」といった論拠に乏しい議論まで持ち出して日本を批判し、TPPに慎重な対応をとるよう議会に圧力をかけている。
与党民主党も後ろ向き
またオバマ政権下での与党で、企業労組から支持を受ける民主党もTPPには後ろ向きだ。民主党のハリー・リード上院院内総務(74)は1月、通商交渉で大統領に強い権限を与える「貿易促進権限(TPA)」法案が提案された際、審議の可能性を早々に否定して棚上げしてしまった。下院でも自動車産業が集積する州選出の民主党議員らを中心にTPPへの慎重論が渦巻く。