さらにTPPが日本市場への輸出拡大につながるはずの食肉業界でも日本への譲歩に否定的な声が強い。全米豚肉生産者協議会は関税維持を狙う日本に対して、「妥協できるとすれば、関税撤廃までの期間の長さだけだ」と牽制(けんせい)。牛肉分野では、日本が豪州との経済連携協定(EPA)交渉で関税の引き下げ水準を19.5%とすることで合意したことが米側を妥協に向かわせるとの観測もあったが、米側は「豪州との合意水準よりも大幅に低い関税を求める」(米商工会議所幹部)との立場をとった。
このためフロマン氏が自動車業界や食肉業界を納得させるには、日本から大幅な譲歩を引き出すことが必要だった。しかし甘利氏の側も聖域なき関税撤廃に反対する自民党内の農水族からの視線にさらされている。TPP成立に必要な国会での批准まで見据えれば、安易に米側に譲歩することはできないのが現実だった。