2006年につくられた恋愛アドベンチャーゲームの傑作『マブラヴ オルタネイティブ』(7)は、人類が戦術機という人型兵器を駆使して敵対的な地球外起源生物BETAと戦う物語。設定もかなり近く、その主人公は、ハーレム的にモテるものの圧倒的に鈍感で周囲の女の子の想いにまったく気づかないという男なのだが、これが見事に谷風長道と重なってくる。そう、SFロボットものとしての魅力がある一方で、王道感のあるラブコメとしての楽しみや、人間同士が理解し合う難しさを感じる作品性が『シドニアの騎士』の読者をひろげているのだ。
遺伝子改造により光合成をすることができるシドニア人。奇居子と人間の融合個体。人語を話す二本足歩行の熊?? シドニアの世界では、思いもよらなかったSFギミックが多数登場し、見たことのない展開へと読者を誘う。H・G・ウェルズは「タイムマシン」や「透明人間」「冷凍睡眠」など多くの新しいSF的ガジェットを発明し、のちのSF小説家たちは彼がすべてのことを書き切ってしまったと嘆いたらしい。けれど、まだまだ新しいSFは生まれてくるのだ。この21世紀の日本から、マンガという胞衣をまとって。(ブックディレクター 幅允孝(はば・よしたか)/SANKEI EXPRESS)