【湘南の風 古都の波】
異論反論が渦巻くに違いないが、あえて選んでみよう。鎌倉を歩くのに最もいい季節はいつなのか。
5月の…、つまり今頃ですね。私ならそう答えたい。4月のお花見や鎌倉まつりが終わり、ゴールデンウイークも過ぎて、心なしか人出も減ってくる。6月になるとアジサイめぐりでまた、大変な人になるのだが、それまでのプチ端境期といいますか。
束の間の、それもほんの気持ち程度の変化なのかもしれない。それでも町には落ち着きが戻ってくる。
鎌倉の魅力は路地だという人がいる。とくに夕方が捨てがたい。日常生活の延長でありながら、ルーティーンとは少し異なる時と場所。こういう空間って、ありそうでないんだよね。
たとえば、鶴岡八幡宮の南、若宮大路の東側の閑静な住宅街を抜ける路地。近隣にお住まいの方のご迷惑になってもいけないので、そっと通り抜けていただくとして…ここには鎌倉時代の政治の中心だった若宮大路幕府跡の石碑がある。そのすぐ奥、左の道に沿う板塀の向こうには大佛(おさらぎ)次郎茶亭が続く。