鎌倉の自然と景観の保存に重要な役割を果たしてきた鎌倉風致保存会の生みの親の一人で、作家の大佛次郎は、1921(大正10)年から亡くなるまで50年以上も鎌倉に住み、52(昭和27)年にこの屋敷を購入している。風致保存会でいただいた資料によると、敷地約1000平方メートル、木造平屋の建物は約94平方メートル。住まいは路地を隔てた向かいにあったそうで、茶亭は書斎や文士仲間の交流の場になっていた。
そうか。吹く風もさわやかな初夏の夕暮れ、茶亭の前をそぞろ歩けば、それだけで原稿がうまくなるような…、ならないか。
≪苔の石段 新緑が包む静寂と喧噪≫
鬱蒼(うっそう)とした木立に囲まれながら、苔むした石段にもどこか初夏の輝きが感じられる。新芽が育っているせいか、苔独特の深い緑がやや浅く、若々しい。
周りで咲くシャガの淡い紫もよく映える。
逗子との市境に近い松葉ヶ谷の妙法寺(鎌倉市大町四丁目)はよく、「鎌倉の苔寺」と呼ばれる。本堂の裏手にある苔石段は、とりわけ見事だ。