消費者物価と雇用者報酬の推移(1997年~2013年)。※各年12月【拡大】
米国ではこの見方が定着していて、物価変動率が例えプラスであっても、雇用状況が悪化していれば、政府も連邦準備制度理事会(FRB)もそれを重視する。リーマン・ショック後、FRBは物価上昇率がマイナスからプラスに転じた後も、失業率の改善が思わしくないことから、大量にドル資金を発行しつづける量的緩和政策を続けてきた。
「物価さえ上がれば、デフレからの脱出だ」と思い込んでいるのは、官僚ばかりではない。官僚たちを教えた大学教授たちがそうだ。
今月(5月)19日付の日本経済新聞の経済教室の寄稿者の某教授氏は「4月18日付『経済教室』で東京大学の渡辺努教授が指摘したように」との前置きに続け、「消費税率の引き上げが価格の硬直性を弱め、デフレ脱却の契機を与えているという解釈も可能かもしれない」と述べている。「価格硬直性」とはコストが変わっても企業は販売価格を改定しない傾向を指す。今回の場合、企業が消費増税の機会を利用して消費税増税分以上に値上げするケースが目立つのを、某教授は学者言葉で硬直性が弱くなったと評価した。