脳腫瘍が悪化して不自然な言動を繰り返す人物を演じるにあたり、原田が気をつけたのは「いかにも『俳優が芝居をしているんだな』と観客にわざとらしさを感じさせないよう、細心の注意を払うこと」だった。だが、過剰にならない程度に迫真の演技を見せることは、当然ながら難しい。だから、心構えとしては「『もし自分がこのような症状となってしまったらどうしよう』と観客に考えてもらえるように、加減を加えながら演技に臨みました」と振り返った。
好奇心とともに歩む
作中の息子2人は、まるで開き直ったかのように、だんだんと前向きな気持ちで母の病と向き合うようになり、肩の力を抜いて解決の糸口を探っていく。仮に原田が玲子と同じ立場に置かれたら、すでに大人となった3人の子供たちはどんな対応をするのか、まったくイメージできないという。「私は自分が病気になると考えたこともないからでしょうね。でも、そろそろ考えた方がいいのかな。一番上の子供は25歳、一番下がまもなく20歳になります。私が急にいなくなっても、泣くこともないだろうし、何とか生きていけるでしょう」