普段は家族が一緒に仲良く暮らすことを願ってやまない玲子だが、脳腫瘍の作用で聞くに堪えない本音を次々と吐露して、周囲をハラハラさせるシーンは印象的で、心の中身が持ち主の検閲を経ずに表面化する怖さを存分に思い知らせてくれる。原田にとって心の中身を満たす最大の“成分”は「好奇心」だという。「『次はどんなことが起きるんだろう』『次はどんな人に出会うんだろう』と、前へ前へと視線を定めているうちに、何十年もたってしまったという感じです」。上昇志向も強く、仕事をめぐっては「もっと良くなりたい」「もっと面白い仕事がしたい」「もっと上には何があるんだろう」と常に考えてきたそうだ。
「私もいろんな若い俳優や女優のお母さん役をやってきたなあ」と、最近つくづく思う。若いときにぱっと芽が出ても、世間の注目が長続きしなかったり、ブレークとはいかずに思ってもみない方向へ路線変更を強いられるケースも目にしてきた。そんな彼らと十数年ぶりに共演するのがまた楽しみの一つだそうだ。「彼らも荒波を乗り越えて頑張ってきたわけです。私には、俳優の先輩として見ている部分と、お母さんの目で見ている部分があって、成長した姿を見ることはとても楽しいんですよ」。5月24日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:財満朝則SANKEI EXPRESS)