協議では、政府側の連携の不手際もあった。
1997年2月に鹿児島県下甑(しもこしき)島で中国人集団密航事件が起きた際に、県警の駐在員しかいなかったため、現地の航空自衛隊部隊が地元警察の要請を受け、「訓練」名目で捜索に協力したケースを示した。
これについて、捜索要請の有無をめぐり防衛省は「警察から要請を受けた」と説明、警察庁は「要請しなかった」と反論した。公明党側の質問に政府の説明者が明確に答えられない場面もあり、自民党からも「政府がきちんと説明できなければ、公明党に納得してもらえない」(国防族)と不満があがった。
自民党側はこの日の協議で「グレーゾーン事態」について合意し、次回協議では国際協力を議論するシナリオを描いていたが、グレーゾーンの2事例の議論で協議は終了した。
公明党の北側一雄副代表(61)は会合後、記者団に対し「事例は運用にかかわる問題が多い。何らかの法制が必要とは現時点で考えない」として法整備に慎重な考えを強調した。座長を務める自民党の高村(こうむら)正彦副総裁(72)も記者団に「(両党の)認識が一致したとは必ずしもいえない」と説明した。