彼女の恋は報われたのか。報われたとしたら、きっと名前は変わっているだろう。最後に住んでいたのは滋賀県だったが、今はどこにいるのだろう。私の名字も変わってしまったのだけれど、珍しい名前だから、もしかして気づいてくれないだろうか。
あの頃の私は生きるのが本当につらくて、学校と家だけしかない狭い世界で行き詰まっていた。家を離れて趣味に浸ることができる時間は貴重で、身内でも学友でもない存在に、どれだけ救われたか知れない。
今や年々ずぶとくなる一方だが、あのとき狭く苦しい世界から救い出してくれた彼女に、もしまた会えたら、たった一言、伝えたい言葉がある。
「ありがとう」
面と向かって言うのは恥ずかしいから、伝えるのは手紙がいい。(道丸摩耶/SANKEI EXPRESS)