人間よりも社会全体を
“巨悪”ではなく、どこにでもある“悪”を。その理由は、警察小説の名手がなぜピカレスクロマンを、という問いへの答えにも通じる。「今回登場するのはみな『小物』。あえて下の人間しか書いていない。ここ数年、人間を書きたい、というよりも社会全体を書きたいという衝動があって。(人間の生きている総体的な現実を文学作品として表現する)全体小説、ですね。それには上から下までを描かなければいけない。今回の作品はそのための『前夜』です。波田もこれから書かれる作品に、何らかの形でリンクするかもしれない」
大きな嘘をつく喜び
2001年のデビュー以降、新聞社に勤めながら作品を執筆していたが、12年末に専業に。日中はジムに通ってトレーニングをし、執筆のための体力作りを欠かさない。「感覚としてはアスリートに近い。自分の競技のためには努力を惜しまない、という。好きなことを書いてお金をもらえる。こんないいことないですよね」
来年、著書が通算100作目を迎える予定だ。「そのあたりから、少しずつ書くものが変わっていくんじゃないかな。永遠に書けるわけではないから、やりたいことを全て書いてしまいたい。僕は、ジャンル小説を書いていますが、そういうジャンル分けが好きではない。ジャンル分けできない世界を書きたい。それがこれから10年間の目標になると思う」