だけど、もしこれが“日本人は世界でX番目に働いている”“世界でZ番目に残業が多い”という統計ならば、どうか。「つまり、忙しいのね」「要するに日本人は真面目なんだね」で片付け、私もこの口走り病に悩まされずに済むだろう。
“有休の消化率が悪い”という事実には、もう少し独特の余白というか、「要するに…」で片付けさせるまでのあいだの時間のようなものが流れていて、そこには彼らがなぜ有休を消化できなかったのだろう、と考える自由が与えられている。「そんなことをしたらクビになるから」という答えはデータと同じで、もしかしたらこんな人も一人くらいいたのではないか、と私は考える。
「取っておく」一族の末裔
その人は霞が関にあるウオーターサーバーを扱う会社の事務をしていて、歳は31歳。今年で勤続12年目になる。こないだの日曜、商店街の近くに雰囲気のいい部屋を見つけたのだけど、入居の契約書を書いている時、自分がもうずっと有休を使っていないことを思い出した。なぜだろう。