松田の目には、吉永がとても礼儀正しいお嬢さんに見えた。きっと両親がよほどしつけに厳しかったのだろう。何でも「きちんとやらなきゃ」と張り切る吉永の姿には好感が持てる。ただ、役者が演技に臨む場合、そんな姿勢が邪魔にもなるというのだ。実際、松田は撮影で“いい子ちゃん”になる癖を「ひっぺがす」のにとても苦労したそうで、「例えば『つうか』とか、『マジうぜ-』と話す若者たちのように、淳ちゃんにも年相応の本当の姿だってあるはずなんですよね」と苦笑いを浮かべた。
「今日は1日しかない」
死期を悟ったイサは病院から自宅へ戻り、残り少ない日々を夫の徹(杉本哲太)と杏子と静かに過ごす道を選んだが、松田はイサの死生観に心を重ねることができた。「もし伝説の姨捨山のような山があれば、年老いた私をそこに捨ててほしい。家族と一人ずつ30分ほど話をするの。内容は悩みとか、私の貯金とか、いろんなことね。そして、静かに死んでいく。形を変えたイサの最期のシーンみたいでしょ? 私も病院でチューブにつながれたまま生涯を終えたくありません」