同じ所属の野間口桂介さんの「無題」は、4年に及ぶ刺繍(ししゅう)で、シャツの生地が板のように変わった。それとは裏腹に、軽やかさや優しい色彩の調和が心地よい。
アトリエ・エレマン・プレザン所属の作品は、弾むような色彩が特徴だ。
冬木陽さんの「あか」は、中心の赤が存在感を示すが、周りの色たちも包むように赤を支えながら調和している。
対照的に、中野圭さんの「花火」は、色の線が縦横無尽に走る。まさに光が飛び交う花火の本質を描いている。
作り手たちは、ダウン症や自閉症、知的発達の遅れなどの障害を抱えている。彼らの創る作品はどれも、攻撃性や争いのない作風が特徴だ。
人類学者の中沢新一氏は2011年に行った講演会(明治大・野生の科学研究所)の中で、アトリエ・エレマン・プレザンの作品との出合いについて「闘争がないんですよ。色彩が戦争しないんです。(中略)私にとっては大変な驚きで発見」と、アール・ブリュット(生の芸術)作品との違いを説明している。