1973年に設立した知的障害者の施設「しょうぶ学園」(社会福祉法人太陽会)では、入所者・通所者が絵画などの創作を行う以外に、障害者の感性を取り込んだ「クラフト」を販売している。1991年に設立したアトリエ・エレマン・プレザンでは、主にダウン症の通所者が、自由に絵を描く。
両施設に共通しているのは、作り手たちに、アートの技術や理念について「何も教えない」ことだ。かつては大島紬(つむぎ)や竹細工の下請け作業をさせていたしょうぶ学園では、障害のある人が楽しめないことを無理にやらせることをやめ、自発性に任せることにした。
多くの作り手たちの特徴は、つくる行為に幸福を感じ、つくり上げた作品には興味がないこと。さらには、うまく作ろう、評価されようという意識とも無縁。だから、彼らにとって作品は、「無垢」の衝動から生まれた表現の結果にすぎず、作品を展示して鑑賞する意味を理解できない人も多いという。