台湾側には、東シナ海での「成功」を元に南シナ海でも紛争の平和的解決を訴え、関係国との対話のテーブルに就くことで外交上の地位を確保したい思惑があるとみられる。シンポジウムにも、シンガポールやマレーシアなどASEAN諸国の研究者を招いていた。それだけに、クローニン氏の発言は、台湾側の狙いに水を差す形となった。
台湾の現在の南シナ海政策は、1993年に策定した「南シナ海政策綱領」に基づく。綱領では、南シナ海の全ての島嶼の領有権に加え、「歴史的水域」の管轄権を主張している。その範囲は、中国が公刊地図で図示している九段線や「U字線」と呼ばれる南シナ海全域を覆う線で囲まれた部分と同じ。クローニン氏が問題視したのは、この綱領とみられる。
「とばっちり」の側面も
ただ、台湾の「領海」を定める法律には歴史的水域への言及はない。法案段階では文言が明記されていたものの、関係国との紛糾を避けるため、立法院(国会)審議で削除された経緯がある。領海法に係争がある島嶼の名称を書き込んだり、独自の解釈で排他的経済水域(EEZ)での外国艦船の行動を制限したりする中国と異なり、台湾は法制面では国連海洋法条約に準拠している。