台北に故宮博物院が開設されたのは65年。およそ半世紀を経たいま、来場者は世界から約450万人(2013年)にのぼる。台湾が大陸からの団体旅行者を受け入れ始めた08年には半分の約220万人だったが、やがて個人旅行も解禁。大陸からの来場者が全体の43%を占めるほどだ。
来年末には台湾南部の嘉義県に南分院もオープン予定。台北・故宮博物院はいまだ、拡大と進化の真っただ中にある。
≪至宝それぞれが秘めた物語≫
若い女性が見つめているのは今から約2800年前、西周後期の青銅器「散氏盤(さんしばん)」。時の権力者が神と交信する祭祀(さいし)の際、水で清めるための器という。内側には350字もの銘文が整然と記されている。
「この青銅器、実は土地の所有権を示す“証書”でもあるのです」と東京国立博物館(東京都台東区)の主任研究員、川村佳男さんが教えてくれた。