乱れ誘い一気に
コート上の温度が35度の暑さの中での消耗戦。相手は様子を見て守って勝てるような選手ではない。錦織は大事な場面になるとギアを上げてベースラインの内側に入り、積極的に仕掛けた。第1セットの第7ゲームでは2本のリターンエースでブレーク。このセットを奪い、四大大会シングルス7度優勝の相手に重圧をかけた。「キュ、キュ」と靴底がコートに擦れる音と鋭い打球音。動きの速さ、反応の鋭さで負けなかった。
第2セットはあっさり奪われたが、途中からこのセットは“捨てセット”と見切りをつけ、体力を温存しながら、第3セットを自分のサービスゲームから始まるように仕向けたのが、後々モノを言った。
1時間を超えた第3セット。鋭い返球で威圧したタイブレークで、ジョコビッチの乱れを誘って一気に4連続得点した。「あれぐらいの選手でもミスをする。誰でもナーバスになるんだ」。フォアが振れない相手に畳み掛けて勝負どころを制すと、第4セットも第1ゲームをブレークして勢いで一気に押し切った。