アルゼンチン生まれの天才ピアニスト、マルタ・アルゲリッチ(73)の素顔に肉薄したドキュメンタリー「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」。マルタの三女、ステファニー・アルゲリッチ(39)が監督を務めたからこそ誕生した得難い作品だ。繊細で、気難しく、仕事場ではどこか近寄りがたいオーラを体全体から発してきたマルタが、映画の中では警戒感を解き、ノーメークといった隙だらけの姿をさらけ出し、芸術、恋愛、複雑な家庭-について本音で語ってしまうところが実に面白い。
自己存在の確認
SANKEI EXPRESSのメール取材に応じたステファニー監督は「母のプライベート映像を昔からよく撮影していました。最初はドキュメンタリー映画にしようとは夢にも思っていませんでしたが、私は第一子を出産して親となり、時間の流れが気になるようになりました。人は誰もが老いるのだと。そう考えたときに、母は有名なピアニストであると同時に、一体どんな人なのか-を娘の視点で描くことは重要だと思いました」と、映画化を決意するきっかけを説明した。