≪疲労募る家族ら 寄り添う保健師≫
発生から10日以上が過ぎ、救出を願う家族らのストレスも日増しに強まっている。「少しでも、その心の重荷を軽くしてあげたい」。家族らが情報を待つ長野県木曽町の施設では、地元保健師らがそっと寄り添い、支え続けている。
広い待機所の片隅で、どの輪にも加わることなく膝を抱え、1人座る高齢の男性の姿があった。待機所では、発表がある度に緊張が走り自分の家族の情報ではないと分かると、ため息が漏れる日々が続いた。度重なる雨で思うように捜索が進まない中、疲労はピークに達しようとしている。
夫婦や支え合う家族がいれば、多少の気持ちをつなぐこともできるが、1人では抱えきれなくなって体調を崩すケースも多い。「お一人で大変ですね」。木曽保健福祉事務所の女性保健師(48)は、その男性にそっと声をかけ、温かいお茶を差し出した。保健師らは、余計な負荷をかけてはいけないと、聞き役に徹する。じっと寄り添う保健師に、男性はぽつぽつと語り始めた。「もうじき祭りがあるんだ」。地元の祭りや郷土の料理…。遠方から息子を捜しにやってきたという男性は、たわいのない話を続けた。