息子の話題は出なかったが、話が終わるころには男性に笑顔が垣間見えた。女性保健師は「家族はケアを目的に待機所に来ているわけではない。話したくないことは話さなくてもいい」と語る。
男性はその後、息子の遺体が見つかったという報告を受け、待機所を後にした。大きな荷物を抱え帰路に就く男性の後ろ姿に女性保健師は声を掛けた。「お気を付けて」。男性はかすかにほほ笑み頭を下げた。
保健師らは普段、母子や病人のサポートなどを担い、今回のような未曽有の噴火災害で家族を支えるのは未知の領域だという。手探りでのケアを続ける上、家族は途切れることなく避難所を訪れ、48時間連続で対応したこともあった。
自身を取り巻く環境も悪化するが、家族らと接するうちに支えたい気持ちは日を追うごとに強まっているという。「今は待機所という非日常の中にいるが、どんな結果になっても日常に帰らなければならない。その手助けになるように最後の家族まで寄り添い続けたい」。女性保健師は思いを込めた。(SANKEI EXPRESS)