「今回のガイドラインがどこかの大きな国(中国)を想定していたとしても、尖閣諸島(沖縄県石垣市)への武力攻撃事態だけを考えていればいいわけではない」
ある交渉担当者は、再改定の狙いについてこう語る。中国を念頭に置けば、尖閣諸島に武装勢力を送り込むような事態に始まり、潜水艦探知などの警戒監視、台湾有事など多様な事態への対処が必要になる。現行の「平時・周辺事態・有事」という分類では、どれにも当てはまらない事態に対応しづらくなるというわけだ。
そもそも「周辺事態」とは、有事でも平時でもない「グレーゾーン事態」で、集団的自衛権の行使を禁じた当時の憲法解釈に抵触しない対米協力を可能にするための〝苦肉の発明〟だった。政府が再三、「地理的概念ではない」と説明しても、「周辺」という空間を連想させる概念を使ったことで、周辺事態法の国会審議では常に「周辺」の地理的範囲が問題視された。
しかし、7月の閣議決定では武力行使が認められない活動範囲について「現に戦闘行為を行っている現場」と規定しており、より柔軟な対米協力が可能となる。「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」があるなど条件を満たせば、集団的自衛権に当たる武力行使も認めている。