3000種以上もの蚊が地球上にはいるらしい。高温多湿な森林地帯特有の生物であるイメージが強いが、意外なことに、極北ほど多数の蚊が生息する地域はないという。その最たる場所がアラスカのツンドラ地帯である。
種の数はわずか20~30種類。しかし生息数は星の数ほど、とでも例えられるだろう。
それほど多くの蚊が発生する理由は水である。数えきれないほどの池、沼、水たまり、ぬかるみなどが、蚊の誕生に不可欠な揺りかごの役割を果たすのだ。
夏の終わりに水中に産み落とされた無数の卵が、気温が上昇する翌年の6月ごろに孵化(ふか)する。初夏のしじまが“ブーン”という狂想曲でかき乱される、何とも不快なシーズンの始まりだ。
メスのみが血を吸う。卵を生むために必要な栄養分を、鳥や哺乳類の血から摂取するのだ。視覚や臭覚で獲物に近づき、湿気や二酸化炭素を感知して針を刺す場所を定めるらしい。