6月1日、全国ツアーのファイナルコンサートで渋谷公会堂のステージに立つ黒木渚=2014年、東京都渋谷区(鋤田正義さん撮影)【拡大】
人生で初めてワンマンライブをしたのは、2012年3月、福岡天神のハートビートというライブハウスだった。収容人員100人ほどの老舗のライブハウスだ。ハートビートは私が音楽を始めたころからずっとお世話になっている場所であり、とても思い入れのある場所だ。
音楽を始め、ライブハウスに出入りするようになっても数年間は細々と活動する日々が続いていた。必ず見に来てくれていた親友たった一人しかフロアにいない日もあったほどだ。しかし、活動を続けていくうちに少しずつ応援してくれる人の数は増え始め、ようやく100人に達したところでワンマンライブを企画することにした。
この100人と一緒に
がらんどうの客席に歌いかけていた数年間を思うと、100人という人数が集まったフロアは壮観だった。その日、私はステージの上で決意した。この100人を武道館に連れて行こうと。それは、新人のアーティストが公言するには、おこがましい願いかもしれないと思う。