パフォーマンスイベント『こわれ者の祭典』の舞台に上がる月乃(つきの)光司さん(左)と、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる(山下元気撮影)【拡大】
日本でアルコール依存症の疑いのある人は440万人、治療の必要な人は80万人いると推計されている(厚生労働省HPより)。しかし、実際に治療を受ける人は少なく、肝臓障害などの病気、飲酒運転や交通事故、自殺などの背景にアルコール依存症が隠れているケースも多い。アルコール依存症からのサバイバーとして、ユニークな活動を続ける月乃(つきの)光司さんに話を聞いた。
「ダメな人」という誤解
2010年、月乃さんと漫画家、西原(さいばら)理恵子さんの共著『西原理恵子×月乃光司のおサケについてのまじめな話 アルコール依存症という病気』(小学館)を読み、この本がもっと早くあったらたくさんの人が救われただろうと思い、書評を書いた。私の父もアルコール依存症だったからだ。父は肝臓を痛めつけ、62歳で逝った。
アルコール依存症は飲酒の習慣がコントロールできなくなり、「やめたくてもやめられない」というれっきとした病気だ。けれども、「アル中」などと卑下するような呼び方をされたり、「意志が弱い」「ダメな人」などと人格まで否定されたりし、正しく理解されていない。そんな偏見から、治療が遅れたり、治療の甲斐なく命を落としたり、事件や事故を引き起こしたり、巻き込まれたりすることもある。依存症の本人はもちろん、家族の苦しみも筆舌に尽くし難いものがあるのだ。