最も難工事になるとみられるのが南アルプスを掘削する約25キロのトンネルだ。地表から最大で約1400メートル下にトンネルを掘るものの、崩れやすい地層とされ、大量の残土も見込まれる。当初は南アルプスを迂回(うかい)するルート案も浮上したが、JR東海は「直線的な最短ルート」を優先した。
南アルプスのトンネル工期も10年以上が予想される。柘植社長は「慎重な議論を重ね、いけるという判断の下で計画を進めている」と強調した。
実際の工事を担う建設会社も「やりがいや夢のある工事」(大手ゼネコン)と意気込む。ただ、日本建設業連合会の中村満義会長(鹿島社長)は「土木の場合、理論上と実際に掘ってみたときに違うこともある」と指摘する。
JR東海は8月の工事実施計画の認可申請の段階で、品川-名古屋間の想定工事費を当初予想より935億円増額した。実際に着工すれば、難工事に加え、東日本大震災からの復興や20年東京五輪の建設需要による人手と資材の不足、それに伴う人件費と資材費の増大も懸念されている。リニアは多くのリスクを乗せて走り出す。(SANKEI EXPRESS)