「人は、たとえ間違った電車に乗ったとしても正しい場所へと導かれる」-。インドのリテーシュ・バトラ監督(35)が中年男女の淡い恋心を描いた初の長編「めぐり逢わせのお弁当」の中で好んで使ったフレーズだ。作中には電車がたびたび登場し、新たな人生へと踏み出した登場人物たちを乗せて、本来向かうべき目的地へと運んでいく。「脚本を執筆中に偶然思いついたフレーズで、とても気に入っているんだ」とバトラ監督。聞けば大の鉄道ファンだそうで、日本語で「鉄ちゃん」とも呼ばれることを知るや、「僕も次回の来日ではぜひ新幹線に乗ってみたいですね」とうらやましそうな表情を浮かべた。
誤配送きっかけに
鉄道の旅こそ人生-。バトラ監督が自分の人生観を忍ばせた本作で、登場人物たちの人生を方向づける“スパイス”として使ったのが、監督の故郷、ムンバイで大勢の市民が利用している「宅配弁当」のシステムだ。ムンバイには「ダッバーワーラー」という弁当配達人が約5000人おり、彼らは約20万人分の弁当を自宅から職場まで届け、空箱を自宅に戻す。誤配の確率は600万分の1に過ぎないそうだが、バトラ監督は誤配が引き金となって起きた男女の淡い恋物語に本作を仕立てた。