「サイレイヤー、サイリョウ」
男たちのかけ声がどんどん大きさを増していった。鞍馬寺(くらまでら、京都市左京区)境内山門へと続く石段には、それまで街道を練り歩いていた何十本もの大松明(たいまつ)が次々と集結。高さ約4メートルほどの大松明は、ひしめき合い、ぶつかり合い、炎の大きさを増していく。真っ赤な火の粉が空を焦がし、くすぶった煙のにおいがあたりをおおう。燃えさかる火は勢いを増してクライマックスへと突入した。
京都・洛北の奇祭「鞍馬の火祭」が22日夜、京都市左京区の由岐(ゆき)神社一帯で行われた。
鞍馬の火祭は、今宮神社(京都市北区)の「やすらい祭」や広隆寺(京都市右京区)の「牛祭」とともに京都三大奇祭の一つとされる由岐神社の例祭。動乱や不運が相次いだ平安時代中期の940(天慶3)年、朱雀天皇が御所にまつっていた由岐明神(みょうじん)を鞍馬へ遷宮したことが起源になったといわれる。遷宮式では、かがり火と松明を携えた村人たちの大行列が道中を照らして由岐明神を出迎えたことから、この厳かな儀式を後世に伝え残そうと、祭りとして守り受け継いできた。