この日の京都は、1000年間の歴史絵巻を繰り広げる「時代祭」も行われたが、昼頃から降り始めた雨で装束をぬらしながらの祭行列となったのに対し、鞍馬では夕方にはそれまで降っていた小雨も上がり、垣間見えた青空に虹もかかった。鞍馬の火祭は雨天決行だが、これも由岐明神の霊験か。
≪勢い増す炎 男衆の熱気≫
祭りに先だって鞍馬の集落を歩いてみた。家々の前には出番を待つ大きな松明(たいまつ)が置かれ、軒先には「御神燈」と書かれたちょうちんが下がり、小さなかがり火が積み重ねられている。代々伝わる調度品や人形、よろいかぶとなどが通りから鑑賞できるように戸を開け放した家もあり、まるで祇園祭の宵山(よいやま)のようだ。祇園祭の山鉾(やまほこ)の原型といわれる剣鉾(けんぼこ)が立てかけられた家も見られた。そんな中、祭りの装束に着替えた子供たちがにぎやかに駆け回っていた。
午後6時、「神事(じんじ)にまいらっしゃーれ」と触れ回る男性の声を合図に祭りはスタート。家々の前に置かれた小さなかがり火に次々と火が入れられた。すべての家のかがり火が揺らめくころ、「トックリ松明」と呼ばれる小さな松明を持った幼児たちがゆっくりと街道を歩き始めた。親に手を引かれながら自分の体よりも大きな松明を必死に抱える様子はとてもかわいらしい。