彼女は生活を愛し楽しむ
カリスマ主婦は洗濯物を整理整頓されたおしゃれな棚に合理的にしまうに違いない。しかし、「奥さんの中の奥さん」は、畳んで積み上げたバスタオルのひだとひだの重なりがミルフィーユのように作りあげる層に、一人うっとりと美を見いだす。彼女には生活を楽しむ才能があるのだ。生活の隅々を、愛することができるのだ。
商店街はいい。しかし、ちょっとした悩みもある。他のお客はいとも自然に八百屋のおじさんと世間話をしているというのに、私だけがどうもぎこちない。まだ馴染んでいないのだ。もしこれが「奥さんの中の奥さん」ならば、どんな会話をするだろうと想像しながら、私は今日も買い物袋を受け取る。帰り道、奥さんならば雲の形をじっと観察しそうではないかと、立ち止まって空を見上げる。そんなわけで、もちろん知らない道を見つけたら、「奥さんならばっ」と迷わず入っていく。