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【溝への落とし物】感情の誕生 本谷有希子 (1/4ページ)

2014.9.1 16:40

火の粉にさわれるほど近くで=2014年8月24日(本谷有希子さん撮影)

火の粉にさわれるほど近くで=2014年8月24日(本谷有希子さん撮影)【拡大】

  • 劇作家、小説家、演出家、本谷有希子さん(本人提供)

 私はスタンディングオベーションができない女だった。

 「スタンディングオベーション? けっ、大体拍手はもうしてるのに、なんでそれをわざわざ立ち上がってまで見せなきゃいかんの」と穿(うが)った見方をしていたからでも、「あー、そんな大満足みたいな格好をしてしまったら、たとえもやもやしていても、心が体の動きのほうを信じてしまうのになあ」と無意識に感じ取っていたからでもなく、それはもっと、自分がコップの上で膨らんでいる水面の、あと一滴で表面張力が失われて飽和する、その最後の一滴のような錯覚というか、何かの代表みたいな責任感を勝手に感じていたからだった。ここで自分が満足してもないのにへらへら席を立つと、すべてが決まってしまう、みたいな、変な感覚に見舞われていたからだったと思う。

 「海底の一粒感」に飲み込まれ

 私がかつて、スポーツの応援ができなかったのも同じ理由だ。私の考えなしのひと声援が駄目押しになって、何か理解もできぬ力学がさっと働いて、まるで天秤(てんびん)が傾くように勝敗が決まったらどうしようと(そんなことはないと分かっちゃいたけど)いつも歯を食いしばっているような人間だったのだ。

特別審査員としての意識が薄れて

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