サイトマップ RSS

【溝への落とし物】感情の誕生 本谷有希子 (2/4ページ)

2014.9.1 16:40

火の粉にさわれるほど近くで=2014年8月24日(本谷有希子さん撮影)

火の粉にさわれるほど近くで=2014年8月24日(本谷有希子さん撮影)【拡大】

  • 劇作家、小説家、演出家、本谷有希子さん(本人提供)

 私はその「あと一押しの、その一押しを自分がやってしまったらやだなあ」という感情を「最後の一滴感」と名付けていた。

 この言葉にしづらい感情は人生経験が増えるにつれて、次第にあらゆるバリエーションを増やしていった。中でも、「最後の一滴感」にまるで対抗するように生まれたのが、「海底の一粒感」で、これは名の通り、まるで自分が海底に落ちた、たった一粒の砂になったかのような感覚である。

 このあいだ、私は観に行ったある芝居で、ついに誰よりも先陣を切ってスタンディングオベーションをしてしまった。時間を経るにつれて、あの、私だけが得点を2点持っている特別審査員としての意識が薄れていき、今となってはカーテンコールで声援すら惜しげもなく飛ばせるようになった成長の結果であるが、それにしても400人は収容しているかと思われる劇場の客席で、一人だけで立ち上がるなどと予想してはいなかったので、私は内心焦った。が、あからさまに座り直すわけにもいかない。

自分なんてちっぽけな砂粒なのだ

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。

ページ先頭へ