絣(かすり)織物といえば、備後絣、伊予絣、久留米絣といった産地が知られており、木綿や麻が材料の中心である。そして京都の織物では豪華絢爛な帯に代表される西陣の織物が世界的に知られているのだが、この西陣でも絹を使った絣織物「西陣絣」がある。「Re-design ニッポン」の第7回は、京都ならではの絣織物を受け継ぐ現場を報告する。
グラデーション
絣織物はインドが発祥とされ、アジアをはじめ世界各地で親しまれてきた。日本では江戸時代に掠れた模様を織る方法が開発され、各地で量産された。もんぺなどの日常着として親しまれてきた木綿や麻の絣織物に対して、西陣絣は和服のお召(略礼装)として高級品の扱いを受けてきた。その違いは、西陣ゆえの極細の絹を用いた繊細な模様にある。今回は、絣加工の伝統工芸士でもある水上政行さんの工房「水上絣加工所」を訪ねた。
絣は、あらかじめ模様に従って染め分けた絣糸(染める部分と染めない部分を紙やゴムでくくり、染め分けた糸)を、わざと微妙にずらしてボカシ模様を作りだす。これはどの産地でも行われていることだが、西陣の場合は、まず素材として、木綿や麻ではなく、絹を用いる。絹糸は木綿や麻よりもはるかに細いため、より繊細なグラデーション表現が可能となるのだ。